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マル子とペケ子のお正月

「あけましておめでとうございます。 本年もよろしくね」
 ペケ子の家に 新年のあいさつに来たマル子は、
 明らかに 大掃除をBeauty Box 好唔好さぼったに違いない部屋を見て、 軽くため息をついた。

「おや、 いらっしゃい。 あけおめ、 ことよろ」
 挨拶の言葉は、 片付きすぎである。

「お正月になると、 日本人なんだなあって しみじみ感じます。
 初詣、 おせち、 お雑煮、 すごろく、 福笑い、 カルタ取り、 良いわあ」

「それ 全部やったの?」
「まあ、 一通りこなしましたけど。 日本人ですし」
 にこにこ顔で答えるマル子であった。

「前半の三つはともかく、 後半の三つは 最近聞かないけどね」
「そうですか?  園児たちは喜びますけど。
 今年は 『いろはかるた』にしてみました」
 マル子は機嫌が良い。 イベント好きだけに、 正月が好きらしい。

「『いろはかるた』とはまた レトロなものを。 よくそんなものがあったね」
「本屋さんに売ってました」
「幼稚園児には 難しくないかい」
 ペケ子が言うと、 待ってましたとばかりに、 マル子が膝を乗り出した。

「それが、 あっという間に覚えちゃいました。
 幼稚園児を侮ってはいけません。 遊びながらだと、 すぐに覚えます。
 大人が完敗しました」
 ここで言う「おとな」とは、 ほかならぬマル子のことである。
 ペケ子が、 なるほど なるほど と感心すると、 マル子はさらに調子に乗った。

「『い』というと、 すぐに『犬も歩けば棒に当たる』と元気に返してきます」
「『ろ』は 『論より証拠』だったかな』
「当たりです。 『は』は 『花より団子』、 『に』は?」
「憎まれっ子 世にはばかる!」
「正解です。 さすが、 ペケ子さん。 自分のことだと すぐに出てきますね。
 うふふ、 では問題です。 『つ』は?」

「……つ、 つ、 つ、 ……つい食べちゃって ゲキ太り」
「そんなのはありません。 『月夜にカマを抜く』です」
「どういう意味?」
「そんなの知りません」
「ん?  まさかのシモネタ迪士尼美語 有沒有效系?  ホモ系?」
 ペケ子の下品な発言に、 マル子は顔をしかめた。

「そんなわけないです。 『いろはかるた』ですよ。
 そんなんだったら、 園児に遊ばせたりできないじゃないですか。
 止めてください。 違います。違うはずです」
 あやふやながらも、きっぱりと反論した。

「作っちゃおうか。 シモネタかるた」
 ペケ子の眼が 爛々と光る。
「そんなの、 誰が遊ぶんですか」
「おとな。 お屠蘇が入ったら盛り上がるぞ~」
 良いことを思いついたという喜びで、 調子に乗るペケ子であった。

「子どもが『いろはかるた』でことわざを覚えるなら、 大人だって覚えやすいかも」
「シモネタを覚えて どうするんですか」
「話題が豊富になるだろ」

 シモネタ → 話題が豊富
 マル子には、 そもそも、 そういう展開が理解できない。

 ペケ子は ますます調子づく。
「世の中にはいろんなかるたがあるだろ。
『アンパンマンかるた』とか 『将棋かるた』とか。
『シモネタかるた』があったって 良いじゃないか」

「『将棋かるた』なんてあるんですか?」
「うん、 テレビでやってた。
『飛車・角・銀・桂 攻めの駒』
『目から火が出る 王手飛車』
 かるたの裏に解説が載っていて、 遊んでいるうちに将棋も強くなる、
 ひと粒で二度美味しいかるた らしいぞ」

 やっと シモネタから離れたところを、 すかさず マル子が話題を変える。
「日本人は昔から、 言葉遊びで覚えるのが好きですよね。 歴史の年号とか。
 言葉遊び自体も好きですよね。 サラリーマン川柳も人気ですし。
 お正月ネタの川柳なんて どうですか」

「あるある。
『元旦や 餅で押し出す 二年糞』
 うちのばあちゃんの得意ネタだったんだ」
 ペケ子は、 話題の転換に失敗したことを悟った。 諦めた。

「おばあ様の作ですか?」
「いや、 違うだろ。 古い川柳なんじゃないのかな。
 正月に、 ばあちゃんがトイレから出てくるや、 ぼそりと呟くのが、 我が家の恒例行事であった。
 …… しかし、 問題があってね」

 とんでもない恒例行事があったものだ と内心で思いながら、 ペケ子は仕方なく付き合った。
「川柳そのもの以外に、 どんな問題ですか?」

「ばあちゃんは 便秘気味だったのよ。
『元旦や』にならないわけさ。 二日とか、 三日とかの朝になっちゃうわけさ。
 で、 たいてい『正月や』に変えていたなあ。
 ある年のこと。 二日が過ぎ、 三日が過ぎても 恒例行事が出てこない年があった。
 家族は、 今か今かと かたずを飲んで待った。
 だんだん心配になってきてね。 五日本藥妝 香港日目に出た時は、 ほっとした。
 やっと 正月が来た感じだったなあ」
 ペケ子も、 何故だかほっとした。
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